没ネタ公開。
ジャンルはホラー?
3000字もない短い作品です。
ジャンルはホラー?
3000字もない短い作品です。
「ちょっと散らかってるけど、ごめんね」
孝也は初めて訪れた美咲の住居に、驚きを隠せなかった。学生の一人暮らしにしては広く、家賃もバカにならないだろうことが容易に想像できる。
美咲は、父はしがないサラリーマンだと事あるごとに口にしていたし、学費を貯めるという名目でバイトもしている。普段の行動からしてみれば矛盾しているとしか言えない。
「驚いた?」
孝也は無言でうなずいた。
「実はね、ここおじさんのマンションなの。一人暮らしするって言ったら、格安で貸してくれたんだ」
「へぇ」
孝也が居心地の悪さを感じているのは何も部屋の雰囲気からだけではない。初めてできた彼女の部屋に初めて入れたのだ。しかも手料理をふるまってくれるというのだから、浮足立つのも仕方あるまい。
「ほら、適当なところに座っててよ。今から作っちゃうから」
美咲はそっとキッチンへ向かう。広さに余裕があり、白と薄茶色の落ち着いたキッチンに、赤や黄色のポップカラーが陳列されている。丸みを帯びたヤカンや鍋がかわいらしい。
ずっと見ているのも変だろうとあたりを見回す。オレンジ色を基調とした部屋にはぬいぐるみがいくつか並べられ、壁にはネコをかたどった時計、出窓には写真と共に小さな植木鉢が置かれている。
きれいに整頓された部屋に感心しつつ、小さめのソファに腰掛ける。
ただ座っているのもやはり落ち着かない。格好がつかないとは思ったものの、結局はあたりを探り始めた。余計なものが置かれていない部屋においては探せるものも特になかった。
ふとソファの後ろに目をやると、異様な物体が目に入った。
大きさは掃除機の本体を2つ分と言ったところ。緑と黄色の配色が目にまぶしく、盛り上がった部分の裾に丸いボタンのようなものがある。
「美咲、これなんだ?」
「どれのこと」
「なんか緑と黄色の」
「ああ、カエルくんのこと」
美咲はパタパタと歩み寄ってきた。
カエルくんと呼ばれた物体を持ち上げてみると、確かにカエルのようではある。最近こういう動物型のオモチャがはやっているらしいが、カエルというのは聞いたことがない。よく見てみれば足や口の部分が可動式になっている。
「父さんの趣味なの。自称発明家でね、いつもは使えないようなものしか作らないけど、これは結構役に立つんだ」
「最近流行りの癒しってやつ?」
「それならもっとかわいいのにしてもらう。これは虫取り機。スイッチを入れておくと虫を捕まえてくれるの。おなかのタンクに圧縮して入れておくんだって。見た目より入るらしいよ」
美咲は捕獲可能な生物の名前を挙げていく。お約束のゴキブリをはじめ、ハエやカ、ナメクジのようなものまで捕まえてくれるらしい。美咲の虫嫌いは相当なもので、その生物の名前を出すことすら気分の良いものではないようだった。
「まあ、カエルの形してるの、虫よけって意味もあるらしいけど」
「虫よけ?」
「そ、虫よけ。悪い虫から守ってくれますよーに、だってさ」
「もしかしなくても俺のこと?」
「さあて、どうでしょ。ぺろりと食べられたちゃったら悪い虫ってことかなぁ。試してみる?」
美咲はカエルの頭をなでながら声に出して笑った。孝也も笑えねぇ、と言いながらも口元が緩んでいた。
「醤油切れてたから買ってくる。ごめんね、孝也」
「なんなら買いに行こうか?」
「良いって。お客様は待っていればいいの。じゃあ行ってきます」
孝也は美咲を見送ると、さっそくカエルをいじりだした。
押してくださいと言わんばかりに隆起しているのだ。迷わずボタンを押す。
床に置くと静かな機械音を立て始めた。これからどう出るか。孝也は小学生のように瞳を輝かせカエルを見る。一度音が止まり、カエルの目に赤い光がともる。孝也の好奇心も爆発寸前だ。
屈みこみカエルをにらみつけること三十秒。微動だにしない。二つの眼を煌々と輝かせたっきりぴくりとも。
「……壊れてるのか? それか虫がいないからか?」
カエルが返事をするわけもなく、孝也はひとりため息をつく。
「美咲、早く帰って来ないかな」
ソファに腰掛け伸びをする。カエルは相変わらず動かない。
睨みつけてはみたものの無反応。何度か小突いてみても無反応。ずっと見ていると、カエルににらみ返されているようで気分は良くなかった。獲物の品定めをしているようにも見え、不気味にさえ思えた。
「どこ見てるんだ、お前は」
カエルの頭を強く叩いてみるがむなしいだけだ。このまま向き合っていると気持ち悪く思えてきた孝也はカエルをそっぽ向かせておく。
天井を眺めながら、部屋にこだまする時計の音を数える。
コトッ、とまぎれて小さな音がした。足元を見るとカエルがこちらを向いている。
「お、何か見つけたのか?」
カエルは孝也の言葉に応えるかのようにカパリと口を開けた。
「マジで虫喰うのか、機械のくせに」
カエル型はだてじゃねぇとひとり呟きながら、カエルの狙っている獲物を探す。面白いものが見れそうだとすっかり童心に戻って。
背後に光る二つの眼がとらえていたものを、孝也は知る由もなかった。
「たっだいま~。ごめんね、ちょっと混んでてさぁ」
美咲を真っ先に迎えたのはカエルだった。いつになく重たい動きでのそのそと。
「孝也にスイッチ入れてもらったの?」
カエルはしゅっと舌を伸ばし、美咲のそばを浮遊していた虫をとらえる。
「あ、ありがと」
サンダルを脱ぎ捨ててリビングへと向かう。手にはスーパーの袋。醤油以外にも缶ビールとお酒のつまみになりそうなものが入っている。カエルも美咲に続く。
「孝也、何かした? 変なにおいがするけど」
返事はない。美咲の声だけがむなしく響く。
「孝也?」
呼びかけに答える者はすでにない。代わりに、カエルがひょこりと跳ねた。
アホネタすぎて封印してました。
ホラー書こうとしてた、とか信じられますか?
自分は信じられませんね。
後始末どーすんのよとか、
人間がそんな物(カエル君)の中に入るのかよとか、
お父さんマッドサイエンティストすぎるとか、
話がストレートすぎるだろとか、
……ツッコミどころ多ッ。
いっそ封印解いて投稿して、感想もらった方が良いかしらん。
けど、悪い虫(=男)、を追っ払うためのカエル。
という、このネタ(太字部分)自体は気にいっているんですよね。
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